針金で機械を操作、ホテルで「エロビデオ」をタダ見したら罪に問われるの?

永遠の0』『海賊とよばれた男』といったベストセラー小説で知られる作家の百田尚樹さんとみられる人物のツイッターアカウントが、30年以上前の「悪事」を告白して、反響を呼んでいる。

「僕の若い頃、ビジネスホテルには100円入れるとエロビデオが見れる機械があった。その100円を入れる穴に針金を突っ込んで上手く操作すると、タダで見れた。だから出張に行くときは針金は必需品だった」

このツイートが3月17日に投稿されると「完全にアウトですよね?」「犯罪じゃないの?」といった指摘が投げかけられた。はたして、このような行為は何らかの罪に問われるのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。

偽計業務妨害罪にあたる可能性? 

「今回の話を聞いて、そう言えば、旅館にはコインを入れてビデオを見る装置があったということを思い出しました」

懐かしそうに西口弁護士は述べる。今回の行為は、犯罪になるのだろうか。

「問題になりそうなのは、刑法235条の窃盗罪です。同条では『他人の財物を窃取』する行為を処罰しています」

勝手にテレビを「タダ見」することは、窃盗ではないか。

「窃盗にあたるようにも思えますが、あたりません。

窃盗罪は、他人の財物、つまり『お金』や『モノ』を盗む行為を処罰しています。それに対して、今回のケースで、針金を入れて奪ったのは『モノ』ではありません。

形の無いサービスなどは法的に『利益』とみることができますが、刑法では『利益』を奪う行為――利益窃盗といいます――を処罰していません。

もちろん、納得がいかないことかと思いますが、刑法などの条文で明確に記載しているものしか処罰できないことになっています。

悪い行為を処罰したいということであれば、それは法律に規定することが必要なのです」

窃盗罪以外の可能性はないだろうか。

「電話料金の支払いを免れる『マジックホン』と呼ばれる装置を電話回線に取り付けたという事例で、偽計業務妨害罪の成立を認めた判例があります。

事例が異なるので、今回のケースにそのままあてはまるわけではありませんが、こうした判例の考え方からすれば、針金を操作して、有料ビデオをタダで見る行為も、偽計業務妨害罪にあたる可能性があるのではないかと思います」

西口弁護士はこのように述べていた。ちなみに、仮に偽計業務妨害罪が成立したとしても、3年で「時効」になる。30年以上も前の行為であれば、結局、処罰されることはないと言ってよさそうだ。