対戦打者が明かす、県岐阜商・高橋の本当の凄さ 11Kの快投生んだ要因とは

MAX150キロを記録も「ストレート自体は思っていたより速くなかった」

 ついに大物右腕がベールを脱いだ。24日の第87回選抜高校野球大会4日目。MAX152キロ右腕の県岐阜商・高橋純平(3年)が松商学園戦で登場した。結果は2安打1失点で完投勝ち。唯一、許した失点も味方の失策絡みで自責ゼロ。11三振を奪う圧巻の甲子園デビューとなった。

 特に観衆を沸かせたのが、初回、先頭打者を相手に叩き出した150キロの剛速球。その迫力は大会NO1投手の評判に違わぬものだった。

 しかし、敗れた松商学園ナインからは意外な言葉が漏れてきた。150キロストレートだけじゃない高橋の凄さを体感したという。

「ストレート自体は思っていたより、速くなかった」

 打席に立った選手は試合後、一様に同じ感想を並べた。負け惜しみの様子はない。それもそのはず。チームは対戦決定後から打撃投手を5メートル近づけ、練習を繰り返してきた。体感は150キロを超えていただろう。試合では全選手がバットを指2~3本分、短く持っていた。

 速球への対策は施していた。では、なぜ打てなかったのか。県岐阜商バッテリーが最も警戒する打者に挙げていたリードオフマン・百瀬雅也(3年)が要因に挙げたのは、意外な球種だった。

40キロ以上の落差で打者を幻惑

「(第3打席で)2球続けてカーブを投げてきた。あれでバットが止まり、考え込んでしまった」

 実際、高橋は打たれてはいけない打者に対し、立ち上がりから100キロ台のカーブを多く投げた。スライダー全盛の今どき、これだけオーソドックスな変化球を多投する投手も珍しい。

 ブレーキの利いた変化球の直後に、自慢の剛速球を投げ込む。球速差は40キロ以上。残像が残っている打者は幻惑された。捉え切れないのも無理はないだろう。

 報道陣が球速や奪三振に期待を向ける一方、当のエースは「打たせて取るピッチングをする」と公言してきた。その言葉通り、「剛腕・高橋」のイメージに固執することなく、冷静に110球を投げ抜いた。

「今日は変化球のキレにやられてしまった。いい投手であることは間違いない」

 150キロのストレートを、より速く、より強く演出するカーブ。対峙した者だから分かる高橋純平の本当の凄さを、松商学園ナインは感じていた。