巨人が熱視線の県岐阜商・高橋純平 原監督だけが無関心の理由

 今秋ドラフトの目玉、最速152キロ右腕の県岐阜商・高橋純平(3年)は上々の甲子園デビューだった。

 24日の松商学園戦に先発。初回にいきなり「150キロ」をマークし、スタンドをどよめかせた。先制した直後の二回に同点に追いつかれると、「5割くらい(の力)でコースに投げることを意識した。中盤からは変化球中心でいい感じだった」と即座に修正。四回以降はパーフェクトに抑え、2安打11奪三振1失点の快投だった。

 183センチ、76キロの均整のとれた体格から繰り出す快速球が武器。この日はネット裏にプロ12球団のスカウトが陣取った。東海地区を担当する在阪球団某スカウトはこう舌を巻いた。

「スカウトの手持ちのスピードガンではMAX145キロ前後でしたが、彼の良さは腕の長さを生かせるところ。ムチのようにしなるから球が伸びる。投球フォームに力感がなく、打者は球速以上の速さを感じるでしょう。最近では大谷(花巻東日本ハム)に近い。安楽(済美楽天)より断然いいですね。三振を奪っていたスライダーをはじめ、カーブ、スプリットなどの変化球も多彩。完成度が高いから、球団内では高卒1年目から一軍で勝てるという声も上がった。もちろん、文句なしのドラフト1位候補。大谷級の逸材だけに、甲子園が終わったら全体の1番人気に浮上する可能性もあります」

■原監督が欲しいのは「エース級左腕」

 中でも以前から熱視線を送っているのが巨人だ。

 視察した原沢GMも「2巡目に残っていることはない」と評価。年明けのスカウト会議では、この高橋と今永(駒大)、上原(明大)ら6人を1位候補にリストアップした。山下スカウト部長はこの時、「高橋の長所? これというより全部いいと聞いている。いずれ特Aになるかもしれない」と話していた。

松井秀喜以来、巨人はスターがいない」といわれて久しい。球団内には「甲子園のスター選手を指名するべき」という声が根強くある。球団関係者は「プロ入り後に爆発的な人気を得るには、甲子園のヒーローという知名度が、人気の下地として大きく影響する」と指摘する。

 巨人はダルビッシュ(レンジャーズ)や田中(ヤンキース)、最近では大谷や藤浪(阪神)といった甲子園を沸かせた選手、特に投手の1位指名をことごとく回避してきた。毎年、日本一を厳命される巨人のドラフト1位は大学生や社会人などの「即戦力」に偏りがちだった。今年は球団もスカウトもゾッコンの高橋の1位指名で間違いないと思ったら、これに待ったをかけそうな人物がいるという。今季で2年契約が切れる通算12年目の原監督(56)である。

 23日、巨人を激励する燦燦会で渡辺最高顧問が「これが最終年、誰もこれで終わったなんて言ってない。13年目に入るかもしれないし、14年目に行くかもしらん」と発言。スポーツ紙は“来季も原巨人”“原長期政権望む”と書いているのだが、渡辺最高顧問の言葉は、実はこう続いた。

「勝ち続けりゃそうなるんですよ。また、勝ち続けることをボクは信じておりますから。適当な後任も目の前にはいないから。そういうことになってもしょうがないですよね。原君、頑張ってくれよ。他にいないのよ、人材は。なかなかいない。まあ、突如出てくるかもしれませんけど。人材は」

 要するに続投の条件は、あくまで勝ち続けることであり、球団幹部が有力候補と認める松井秀喜が態度を保留したままでいることなのだ。そんな原監督はだから、契約最終年の今年は例年以上に勝利にこだわることが予想される。もちろん、ドラフト戦略も例外ではない。

「原監督は右の菅野に並ぶ次世代の左のエースが欲しい。32歳の内海が故障で長期離脱し、今季の開幕ローテ6人のうち、左は34歳の杉内と新助っ人外国人のポレダの2人。左の先発は最も世代交代が迫られるポジションです。ドラフトに向け、『エース級の左投手』と球団に要望しているようです」(前出の球団関係者)

 左投手は、ともに最速150キロ級の速球を投げる今永と上原の大学生コンビが1位リストに入っている。球団内の「甲子園のスター」を望む声は、原監督のさらなる長期政権のため、かき消される可能性がある。