炭水化物抜きダイエットはやっぱりキケン!? 虚実入り混じる「食」の情報、その真偽をただす 【前書き公開】『食をめぐるほんとうの話』

いよいよ忘年会シーズンの到来です。仕事のつきあいで、つい飲みすぎたり食べすぎたりしてしまう人も多いのではないでしょうか。

この時期、テレビでよくウコンやトクホのお茶のCMを見かけます。みなさんはなぜウコンが悪酔いを防ぐか、ご存じですか? また、トクホのお茶が脂肪分の吸収を減らし、ビタミンCが風邪に効く、あるいは、セサミンが老化防止に役立つしくみについて、知っていますか?

そんな素朴なギモンとともに、虚実入り交じった情報を科学に基づいて整理した新刊『食をめぐるほんとうの話』が、健康で長生きするための必読書として話題を呼んでいます。飲みの席で同僚や部下にうんちくを語るのにも役立つ同書より、前書きを特別公開。盛り上がること、うけあいです!

序 食をめぐるミステリー――炭水化物抜きダイエットの罪

2015年10月26日、WHO(世界保健機関)はベーコンやハム、ソーセージなどの加工肉を一日に50グラム以上食べると、結腸や直腸のがん=大腸がんにかかるリスクが18パーセント高まると発表しました。

WHO傘下のIRAC(国際がん研究機関)が世界800の研究をまとめた結果だそうで、加工肉の発がん性は喫煙やアスベストほど深刻ではないものの、明確だとしています。また牛、豚、馬などの赤み肉もおそらく発がんの可能性があるだろうとしています。唐突な発表でドキッとさせられますが、IRACでは私たちが日常的に接するお酒や化粧品の素材、車の排ガスも発がん性の可能性ありとしています。

とはいえ、日本ではすでに30年以上前から、食生活の欧米化=肉類の摂取量の増加、野菜の摂取量の減少が大腸がんを増加させていると指摘されており、肉類云々は今さらの感があります。

困ったことに、こうした食材に関する研究発表や報道では詳細が説明されないのが常です。「説明しても素人にはどうせわからない」と思っているのかもしれませんが、いったい加工肉の何が悪いのか、他の食材との関連はないのか、そういったファクトが示されないまま、単に「加工肉でがんになる」といわれても、私たち消費者は不安が募るだけなのです。

こうした断片的なもののみならず、世の中には食をめぐるさまざまな情報が溢れています。たとえば――。

家系ラーメンで中高年がポパイに!?
東京都内の中高年バドミントン愛好家らの間で、今から10年ほど前、夜に試合がある日の昼に「家系ラーメン・大盛り」を食するのがひそかに流行りました。

バドミントンは試合の過酷さでは他に類を見ない激しいスポーツです。バドミントンと似たコート競技であるテニスなら、何度かラリーをしているうちに相手がどう頑張っても追いつけないキラーショットが生まれ、ラリーが延々と続くことはほとんどありません。

ところが比較的コートが狭く、構造上、落ちる間際に急激にスピードが減少する羽根(シャトルコック)を飛ばすバドミントンでは、どんなに厳しくコーナーをつかれても、あるいは前後に揺さぶられても、ダッシュすれば何とかシャトルに追いつけてしまいます。

そのためラリーがはてしなく続き、どちらかが倒れるまで終わらないデスマッチとなり、これが中高年にはきついのです。ポイント21点先取でワンセット、2セット先取でゲームオーバーとなりますが、若者との試合ではワンセットももたず、息も絶え絶えになってギブアップしてしまうのが常。

ところが、横浜に端を発して関東全域に広がった濃厚豚骨系の「家系ラーメン・大盛り」を食べると、持久力がアップし、ワンセット終わるまで息切れしないという評判が広がったのです。ラーメンをそのまま食べるのではなく、店が無料で提供している「すりゴマ」と「おろしニンニク」を大さじ何杯も追加して食べる。すると、ホウレンソウの缶詰を食べたポパイのように元気になったという――。

その現象は確かに中高年バドミントン愛好家らに顕著に現れました。それまで中高年ペアとの試合となると余力を残していた若者たちが、自分の親と同じような年齢のおじさんたちに「間違っても体力負けするわけにはいかない」と、気を引き締めて試合に臨むようになったのです。

中高年の誰もがこの結果を喜びましたが、では、その持久力増進効果を発揮したのがゴマなのか、ニンニクなのか、それとも両方なのか、はたまた大盛りがそのエネルギーの源泉だったのか――誰にもわかりませんでした。

実体験! 炭水化物抜きダイエットの顛末
ここ数年、ダイエットには炭水化物を食事から抜くのが一番という説が広まっています。炭水化物は万病の元だから食べないほうがいいという説まで聞かれます。はたして炭水化物悪玉論は本当に正しいのでしょうか? 

筆者(中沢)は2014年4~7月の4ヵ月間、断続的に炭水化物をほとんど摂らない生活を試みました。その顛末をご紹介します。

ちなみにこのトライアルには切実な理由がありました。会社勤めをしていた40代のころの体重は58キロ。その後、主夫として家で家事をしている時間が多くなると、約10年で70キロを超え、その分が腹部に集中したため会社員時代に買ったスーツがすべて着られなくなりました。体を元に戻して服に合わせることにしたのです。

まず、食事の回数を一日1~2回に制限。朝は起き抜けに市販の野菜ジュースを1杯。昼は何も食べずブラックコーヒーや水などでまぎらせました。夜は気のすむまでたくさん食べましたが、肉や魚をメインにし、野菜は生のサラダか、野菜炒め、味噌汁の具などとしてできるだけ多く食す。炭水化物はせいぜいが小麦粉を原料とする餃子の皮程度。

すると、2~3日たって体が徐々に慣れてきたせいか、昼間はさほど空腹を感じなくなりました。体重は目に見えて減っていき、毎日、体重計に乗るのが楽しくなり、その喜びがさらに我慢を後押ししました。

ところが、2週間もたつと体に変調が表れます。一般に暴飲暴食して内臓が弱ったとき、唇の両端がただれて痛むことがあります。その症状がひどく出て口を開けられなくなり、さらに口内炎もできて、ものが食べにくくなりました。

これはとても意外でした。「一日に必要な野菜の栄養が摂れる」と謳っているジュースを毎日飲んでいましたし、夕食にトマトやキャベツ、ニンジン、ダイコン、シシトウ、ホウレンソウなどを輪番で食べ、ワカメやコンブも食べていたので、必要な栄養は摂れていると思っていたからです。

意外なことがもうひとつ。夕食でたっぷり食べても飢餓感がなくなることはありませんでした。

肉や野菜は見るのも嫌なのに、白いご飯やうどんが無性に食べたくて、それはのどの渇きにも似た切実な渇望で、テレビでおいしそうな丼ものの映像など見てしまうと、もう我慢できません。深夜営業している牛丼屋に走ったものの、外の風にあたると気分が変わり思い直して途中で引き返すという、無駄なことを何度か繰り返しました。

そうこうするうちに体調はどんどん悪化。朝、ベッドを出る際は、必ず立ちくらみを起こし、時折何かの拍子に動悸を感じることも。大便の回数は2日に1回から、出ない時は1週間に1回になり、ひどい便秘に苦しむことに。

体重は2ヵ月程度で目標を達成しましたが、体調はますます悪くなり、じっとしているのに疲労感、倦怠感、脱力感が増し、ついにはモノを取るために腕を上げることすらおっくうになってしまいました。手先がしびれたり震えたりしてキーボードを打てず、仕事ができなくなったため、このダイエットは中止せざるを得なくなった――。

炭水化物は悪玉のはずなのに、どうしてこんな惨状になってしまったのでしょうか。

「高級な大吟醸酒に添加物」のふしぎ
ある有名グルメ漫画では、日本酒のあるべき姿について次のように論じています

〈日本酒は本来、米と米麹と水だけで造られるべきものである。しかるに、日本の大手酒造メーカーは、添加物を大量に加えている。醸造用アルコール、醸造用糖類、酸味料、化学調味料等々。こうした添加物は安価であり、本来の日本酒に加えれば製造コストを大幅に下げられる。

だが、そうして造られた酒はべちゃべちゃして妙に甘っとろいだけで、日本酒本来の深みのある味わいがなくまったく美味しくない。でも酒造メーカーは、原料の量が同じなのに三倍の量の酒が造れてボロ儲けできる美味しい商売を覚えた結果、まともな日本酒を造ろうとはしなくなった〉

酒店の店頭で見ると、日本酒の中で純米酒の割合は非常に少なく、全体の1割もありません。これは本当にメーカーが〝ボロ儲け〟のために、血眼になって日本酒に混ぜ物を入れているためなのでしょうか。

確かに2リットルの紙パックに入った安い価格の日本酒の成分表を見ると、醸造用アルコールに醸造用糖類、酸味料など数種類の添加物が表示されています。混ぜ物ばかりだから価格が安いといわれれば、そうかなとも思えます。

ところが、実にふしぎなことがあるのです。