キャンディーズ「春一番」 3年間カラオケから消えていた理由

 ♪雪が溶けて川になって 流れて行きます……

 キャンディーズの代表曲「春一番」が、約3年間も通信カラオケで歌えなかったことをご存じか?

 作詞・作曲を手掛けた穂口雄右氏(67)が、2012年3月に日本音楽著作権協会JASRAC)を退会。著作権を自己管理した。これを受け、通信カラオケ大手の第一興商と「JOYSOUND」「UGA」を運営するエクシングが、同年6月に配信を停止。カラオケの“デンモク”から消えてしまった。

「大半の楽曲の著作権管理はJASRACに委託されています。カラオケ会社が個人と契約するケースは極めてマレで、穂口氏とも契約を結んでいなかった」(カラオケ業界関係者)

 本紙の取材に、穂口雄右氏は当時の心境をメールでこう回答した。

JASRACを退会した理由は、著作権著作隣接権の違いを国民の皆さまにお伝えしたかったからです」

 著作権とは作曲家ら“創作者”の権利をいうが、著作隣接権とは歌手や演奏家、レコード会社、放送事業者など“伝達に重要な役割を果たした者”に認められた権利をいう。その著作隣接権をレコード会社などが乱用していると感じた穂口氏は、音楽業界の体質を問題視し、闘ってきた。そんな“長い冬”が過ぎ、この春めでたく「春一番」がカラオケに復活した。

■ファンから直接「復活を」の懇願も

「私は現在、アメリカで活動しており、こちらで音楽活動を円滑に進めるために、米国の著作権管理団体に参加することを決めました。米国の大手著作権管理団体の全てがJASRACと国際条約を締結していることから、日本での演奏権管理は自動的にJASRACに戻ることになります」
 このため、今年1月から「春一番」は、再びJASRACが管理することに。第一興商は、今月10日から配信を再開。エクシングも先月27日から配信を再開した。

「私がJASRACを退会した時に、一番注目されたのがカラオケだったことに驚きました。私は音痴でカラオケを一切やらないので、これほど世間に根付いていたことを知りませんでした。キャンディーズファンの皆さまからは直接『何とかなりませんか?』との連絡がありました。それで、遅まきながら、これからはカラオケ業界が日本の音楽界を救う存在になると確信しました」

 今年、関東地方では3年ぶりに春一番が吹かなかったが、カラオケ店では、待ちに待ったファンの歌声が吹き荒れることになりそうだ。