一流のリーダーは飛行機のなかで何をして過ごすか

一流のリーダーは、飛行機に何を持ち込んでいるのでしょうか
 皆さんのような多忙なビジネスエリートの方のなかには、出張の際の新幹線や飛行機の中が、唯一「ひとり」になれる場所であり、リラックスできる場所という人もいらっしゃるかもしれません。

 実際に、「新幹線に乗っている時が、一番くつろぐことができる」「機内にいる時、素の自分に戻ることができる」という声をよく耳にします。

 ところで、飛行機に搭乗する時、どんなものを機内に持ち込んでいますか?

 一流のリーダーたちに同様の質問をしたところ、こんなユニークな答えがかえってきたことがあります。

 「スケッチブックと色鉛筆」
「タロットカード」
「ジグソーパズル」

 一流のリーダーは、なぜこのようなものを持ち込むのでしょうか? 
 
 また、飛行機の中でどんなことをしているのでしょうか?

 第20回コラム「なぜ一流のリーダーは、東京―大阪間を飛行機で移動するのか」では、一流のリーダーは「アイデアは移動距離に比例する」、また、「インスピレーションは異空間に身を置いた時に訪れる」ことを知っているため、大阪までの移動の際、新幹線ではなく飛行機で移動することを好む人が多いことを述べました。

 一流のリーダーは、飛行機のなかで何をしているのか。

 「やっと落ち着いたから、ワインでも飲んでゆっくりしよう」
「せっかくの自由時間だから、思う存分映画を見て楽しもう」
「久しぶりの休み時間だから、のんびり音楽を聞いてリラックスしよう」

 このように、やっと訪れた自由時間を「くつろぐ」時間にあてたいと多くの人が思うことでしょう。

 ところが、一流のリーダーはそう思いません。機内にいる時間を「くつろぐ時間」として捉えず、「ある時間」として楽しんでいます。

 その「ある時間」とは、いったいどんな時間なのでしょうか?

 ここで、海外出張の場合を見てみましょう。

一流のリーダーの海外出張は
10分の休憩もないほど超多忙だった!
 欧米諸国などへの海外出張の時には、移動距離の長さに比例し、飛行機のなかで過ごす時間も長くなります。それゆえ、移動距離の長いフライトは、インスピレーションが降りてきたり、アイデアが湧いてきたりする可能性の高い空間となります。

 欧米諸国などへの海外出張の時には、移動距離の長さに比例し、飛行機のなかで過ごす時間も長くなります。それゆえ、移動距離の長いフライトは、インスピレーションが降りてきたり、アイデアが湧いてきたりする可能性の高い空間となります。

 たとえば、パワーブレックファストと呼ばれる朝食が、朝の7時、8時、9時という具合に1時間ごとに予定されていたり、また、会議の合間の休憩時間に、10分程度の顔合わせのための打ち合わせがいくつも入っていたりと、身体も心も休める暇はありません。

 また、ディナーの時には、重要顧客へのご挨拶やネットワーキングのためのアポイントメント、他国の同僚たちとの交流などに気をとられ、食事どころではありません。以前の私の上司は、「ワインなのにワインの味がしなかった。本当は香り豊かな美味しいワインだったはずなのに」と言うほど多忙を極め、ワインを味わう時間すらなかったようです。

 当時秘書として働いていた私は、なるべく上司の身体に負担がかからないよう細心の注意を払いスケジュールを組むようにしていましたが、それでもなおこれ以上スケジュールを簡素化できないというレベルになっても、「過密なスケジュール」から逃れられないリーダーも多くいました。

 そんな強行軍とも言える日々が待ち受けているわけですから、現地まで向かう飛行機の中での過ごし方が重要になってきます。

 エグゼクティブの多くに、機内で身体に負担がかからないようビジネスクラスの席が用意されます。ヨーロッパ便のビジネスクラスの席を予約すると、時期により100万円程度の費用がかかりますが、エグゼクティブが疲労困憊してしまっては、良い業績を残すことができないという配慮からビジネスクラスの席が用意されます。

機内に持ち込む「エアーファイル」に
私が忍ばせた“とっておきの資料”
 ここで、一流のリーダーたちが、長時間フライトの機内でどのように過ごしているのかがわかるエピソードをご紹介しましょう。

 これは、当時秘書であった私と上司との間のやりとりです。

 上司がイギリスで開催される国際学会へ参加するために、空港へ向かう直前に交わされた会話です。

上司:「今回のAir File(エアーファイル)は、ずいぶん分厚いね。」

私:「はい、重くなってしまって申し訳ありません。もしも必要でないものがありましたら、現地で秘書の方にお願いして処分してもらってくださいね」

上司:「ああ、わかったよ。(ファイルの中身を見ながら)機内での時間が楽しみだ。ボクの頭脳を喜ばせてくれそうだ!」

私:「だといいのですが」

上司:「寝る前のワインが美味しくなりそうだ。それでは行ってくるよ」

私:「行ってらっしゃいませ」

 やりとりのなかで登場した「Air File(エアーファイル)」とは、上司と私の間で名付けたファイルのことです。いわゆる書類を入れるクリアファイルのことで、飛行機に持ち込むため「Air File(エアーファイル)」と名前をつけたというわけです。

 この「Air File(エアーファイル)」には、国際学会に参加するために目を通しておかなければならない書類はもちろんのこと、今後目を通しておいたほうがいいと思われる書類などを揃えておきました。

 さらに、国際学会とは全く関係のない書類も多数入れておきました。それらの書類とは、日々多忙を極める上司がインスパイアされたり、ミッションに息吹や新しい風を吹き込むことができたり、意思決定が迅速にできたり、忘れていそうな案件をフォローアップできるためのものです。私が想像し得る限りの様々な書類を入れておきました。

 私が「Air File(エアーファイル)」を思いついたのは、秘書は多忙な上司の先の先まで見据え、常に先読みをしておかなければならないと思ったからです。

 どんな書類が入っているのかわからない「Air File(エアーファイル)」ですが、上司は、そのファイルを毎回楽しみにしていてくれました。

 なぜなら、そのファイルの中に入っている書類に目を通すことで、普段多忙なあまり考えそびれていたものを思い出したり、思考の枠を広げるためのヒントを得たり、新たなアイデアを呼び起こしてくれたりするから、とのことでした。

「異空間」で「予期しない書類」に目を通すことで、いろいろな考えが頭のなかで展開していくようです。

飛行機はくつろぐというより
「異空間」「非日常」を楽しむもの
 このように、一流の人たちは、機内では、「思考を遊ばせる」時間をもっています。

 日々凝り固まってしまいがちな考えから脱却し、頭脳を真っ白なキャンパスにしてから、新たな考えを取り入れようとしているのでしょう。そうすることで、これからの仕事を成し遂げてゆくためのヒントやパワーを得ているのです。

 機内で「思考を遊ばせる」時間を持つ。

 冒頭で、一流の人たちは、搭乗する際に「スケッチブックと色鉛筆」「タロットカード」「ジグソーパズル」などの一見不思議に思えるユニークなものを機内に持ち込んでいるとお伝えしましたが、これらのグッズも「思考を遊ばせる」ためのものです。

「異空間」で「いつもと違うことをする」ことが、インスピレーションが舞い降り、アイデアが湧いてくるための秘訣のようです。長距離フライトは、そのための格好の場所というわけです。

 一流の人たちは、「異空間」という「非日常」を存分に楽しむことで、仕事の成果を高める原動力としているのです。

 いかがでしょうか。これから飛行機の中での過ごし方を少し変えてみませんか?