就活生に絶対言ってはいけない「NGワード」

2016年の就活戦線は「史上類を見ない超短期決戦」。採用情報、企業説明会などの広報活動が3月にスタートし、6月には採用選考が始まります。それまでにエントリーシートを提出し、WEBテストを受け、就活生は全力疾走状態です。

今回は親世代が子どもの就活中に絶対言ってはいけないNGワードをまとめて、ご紹介します。会話には、十二分にお気をつけ下さい。

NGワード①「帰ってこないの?」

この連載の過去記事は こちら
今の学生はとても親思い、祖父母思いです。Uターン就職を研究している大学の先生のお話では、「祖父母からの要望」がUターンの決め手になっているケースも多いそうです。直接言わなくても、親や祖父母からの無言の期待を感じて選択するケースもあります。

いずれの場合も、本人が納得して選んだUターン就職であればまったく問題ありません。しかし、就活がかなり進んでから突然、「えっ、帰ってこないの?」と言うことは避けていただきたいのです。
 
以前は、冬休みと春休みを使って別々のエリアで就活することが可能でした。しかし、2016年新卒からスケジュールが変更となり、大学の授業を気にせず就活できるのは春休み期間だけになりました。その結果、就活地域の掛け持ちが難しくなってしまったのです。

リクルートキャリア「就職みらい研究所」の調査では、昨年の実施者ベースで、対面の企業説明会参加回数は平均18.89社です。このほかに、大学での合同企業説明会や学外での合同企業説明会もあります。

例えば、大学は東京で、実家が長野県の場合、両方の地域を掛け持ちして乗り切るにはとても厳しいスケジュールになります。東京で就職するつもりで、企業研究や説明会への参加など、就職活動が進んだ段階で、後出しジャンケンのように「帰ってこないの?」と言われたら、学生は途方に暮れてしまいます。 

本人がどんな仕事をしたいのか、どこで、どんな働き方をしていきたいのか。家族はどう考えているのか。そして、どんなサポートをしてほしいのか、できるのか。本格的な就活シーズンに突入する前にこそ、ご家庭で折に触れ話し合っておいていただけたらと思います。

採用選考活動が始まると、合否に一喜一憂します。不採用通知に、自分の存在自体を否定されたように感じて落ち込んだり、このまま就職先が決まらないのではないかと不安になったりします。

親は、慰めよう、励まそうと思って声をかけるのですが、かえって『何もわかってくれていない』と感じさせてしまうこともあるようです。

私自身もそうした失敗をしました。子どもが志望先から、不合格のメールを受け取ったときのことです(最近は不採用通知もメール)。

落ち込んでいる様子だったので、励ますつもりで、「第1志望じゃないんだから、いいじゃないか」と言ったのですが……その後、2週間ほどは顔を合わせることさえ避けられました。本人にとって、第何志望であろうと受けたところを落ちたら、がっかりする。『全然わかってくれていない』と感じたのでしょう。

NGワード②「それでいいの?」
もう1つは、第二志望の企業から採用通知を受けて本人が「この会社に決めた。これで就活も終了!」と言ったとき。「本当にやめていいの?」と軽い気持ちで聞いてしまったことです。

子どもは、このひと言で「父親は、本心ではこの内定先に納得していないんじゃないか」と感じてしまったのです。これまでに多くの就活生から、親の言葉に傷ついたという話をさんざん聞いていたにもかかわらず、私が犯してしまった失態。何も考えずに出てしまったひと言です。

ほかにも、学生たちがどんなところでめげているのか、いくつか例をご紹介しましょう。

<父親編> 
「そんな会社で何をするつもりだ」 
「それは一生勤める価値のある会社なのか」 
「俺のころは~」 
「うちの会社では~」
<母親編> 
「転勤がない会社だといいけど」 
「公務員なら、土日は休めるよ」 
「帰ってきてくれたら、安心なんだけど」
男親、女親で、かける言葉に傾向があるのかもしれません。父親は自分の価値観を押し付けがちで、母親は自分の要望を言いがちなようです。

さて、本当に学生たちが求めているサポート、学生のためになるサポートは何でしょうか。可能であれば、まずしていただきたいのは、就活費用のサポートです。

特に優先していただきたいのが、ネットワーク環境整備のための費用をサポートすることです。WEB世代の就活は、多くのことがWEB上で行われます。リクナビでは、自己分析や企業研究を効率的にできるコンテンツも用意していますが、こうしたものの利用もWEB上です。

企業エントリー後のWEBテストも増えています。しかもかなりの量の文章を読ませるテストも増加しています。このため、小さな画面のノートパソコンでWEBテストを受検することは、正直しんどいようです。見やすいサイズのモニターがあるかどうかは、作業効率だけでなく、テストの出来にも影響します。

交通費などお金の相談に応える
また、最近はモバイルのルーターや、スマートフォンのデザリング機能でWi-Fi接続している学生も多いと思いますが、WEBテスト中、通信が落ちてしまったり、フリーズしてしまったりしたら、実力も発揮できません。可能な限り、WEBテストは有線LANで受検できる環境にしてあげてほしいのです。

「お金が続かないから、説明会参加はあきらめました」。「交通費をねん出するためにバイトを増やしたら、バイトの時間と重なって面接に行かれなかった」これが、就活生から聞いている現実です。

特に、在籍地と就活地が離れている場合は、交通費の負担は大きく、日ごろ定期で大学と住まいを往復している学生にとって、想定外の大きな出費になっています。しかし、今の学生は、お金のことで親に負担をかけさせてはいけないという思いが強く、言い出せない就活生が多いことも知っておいてください。「就活でお金に困ったら、遠慮なく相談してきてね」という言葉をさりげなく伝えてあげてください。

エントリーシートや面接では、自分の強みを伝えなければなりません。そのために必要になるのが自己分析です。しかし、本人が感じている長所と、周囲が評価している長所が合致しているとは限りません。親こそ、本人や他人には見えていない長所を指摘してあげられる存在です。

例えば、本人が欠点と考えている「消極的なところ」も、親なら「じっくり考えて自分の行動に責任をもつタイプ」と指摘してあげたり、「融通が利かないところ」も、「粘り強く、あきらめずに頑張れる良さがあるじゃない」と言ってあげられます。

もう一つの応援が、社会人としての常識やマナーを教えてあげることです。とっさのときに出るしぐさや言葉のくせ、敬語の使い方は、身近にいる親だからこそ注意してあげることができ、また日ごろの生活のなかで手本を示し、教えてあげられる、一番の応援かもしれません。

「『面接のドアを開ける前に、口角をあげて1回ほほ笑みなさい』とアドバイスしてくれた」「身だしなみをチェックして、『OK、大丈夫』と送り出してくれた」など、親からのマナーや身だしなみへのアドバイスは学生にとって、金言なのです。

黙って聞いてくれるだけでうれしい
就活期間中に保護者が子供をどう支えるべきか、正解はないと思いますが、最大の応援は、聞いてあげることだと私は思っています。

実際、就職活動中の親とのやりとりで嬉しかったことを学生に聞いてみると、多くが「批判せず、否定せずに応援してくれた。聞き役に徹してくれた」「うまくいっていなかったとき、何気ない話題で話しかけてくれて、話すきっかけをくれた。父の優しさがうれしかった」など、具体的な指南よりも、まず親が黙って話を聞いてくれたことをあげています。

就職活動がうまくいかずに、閉塞感が立ち込めているときも、自分の話に耳を傾けてくれるだけで、“受け入れてくれる人がここにいる”という勇気づけになります。どうぞ、一番身近で、最強のサポーターとして、就活生の心の支えとなってあげてください。